中国の江南地方とは、一般に長江(揚子江)の下流域、南岸地域一帯を意味します。
代表的な都市では上海、杭州、紹興、蘇州、鎮江などが知られています。
江南地方は日本と同じように四季の移ろいがあり、長江の支流が網の目のように張り巡らされた、風光明媚な水郷地帯としても有名です。水と天候に恵まれ、肥沃で産物豊かな土壌は「魚米之郷」とも称されています。食糧のみならず、紹興酒をはじめ、お酢・醤油などの嗜好品や調味料も数多く産出し、長い歴史の中で幾多の名菜(名物料理)が生まれました。
歴史的にも古くは春秋時代、今の蘇州は呉の都として、紹興は越の都として栄えました。杭州も南宋の都として古都の風格をもつ気品あふれる都市です。揚州は清代、塩商人の街として栄華を極め、時の皇帝は「南巡」と言って何度も揚州や江南地方を訪れたそうです。
このように地理的にも歴史的にも恵まれた江南地方では、古くから質の高い、たおやかな文化が形成されました。洗練された華やかな「名菜」と、素朴でどこか懐かしい「家常菜」。そのどちらにも旬の食材を多用し、味付けの濃淡を使い分ける江南料理は、悠久の歴史をもつ中国の食文化に於いても確かな評価を得ています。
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